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一般財団法人北海道河川財団会長 北海道大学名誉教授(15代総長・放送大学名誉教授(5代学長))
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2016年の年頭所感


丹保憲仁 北海道立総合研究機構理事長


明けましておめでとうございます。謹んで新年のお慶びを申し上げます。


 北海道の皆様には、日頃より当研究所群の日々の仕事にご支援と御高導を賜っておりますことを改めて厚く御礼申し上げます。


 平成22年道立の22の研究所を統合して発足して以来第一期の5年を終了し平成274月から第二期5年に入りこの春で1年が過ぎます。第一期では、北海道民が抱えている様々な分野の課題を、学問・技術の基本に立ち返って、横断的・未来志向的に立ち向かっていく研究開発技術集団を作り上げようと努力してまいりました。開道150年を迎えようとする北海道の近代の歩みを振り返り、縄文時代から引き継いだ長い歴史を学び、今終焉を迎えつつあるように思われる近代350年の人類大膨張の果てに、アジアの辺境の地北海道をどのようにして人類の確かな営みを刻む近代後の先進地に展開していくかが問われているように思います。


 近代文明の発祥の地英国、とりわけその先駆的な働きをしたスコットランドはヨーロッパの辺境の地でした。森林を造船材とエネルギー資源に使いつくした英国は、石炭にエネルギー源を求め、エネルギー・動力革命を果たし、近代の生活・産業・保健・政治・経済スポーツ活動の殆どの仕組みを創生して、事後300年英国は近代帝国主義体制の先頭を歩き世界に秩序を支配し、今もってその地方語を世界共通語として残影を保っています。


 米国・大洋州・南アフリカに広がった旧大英国帝国圏域の国々はいまだに世界の大勢力であり、近代社会の核構造を担っています。フロンテアースピリット、成長、競争の自由などを美徳とする(西欧)近代文明です。そのくびきの中に呻吟していた中国が近代以前の中華帝国の栄光と幻影を夢見て、近代ヨーロッパが作り出した成長社会の方式を遅れて踏襲し、中華人民共和国(本体)、台湾、シンガポール、香港などの大中華文明圏を形作り経済的発展と人口膨張による勢力圏の拡大を計ろうとしています。


 その両者の歴史的接続と地理的膨張が、インド亜大陸と遅れてのアフリカ諸国の近代化の進展とも共振して、地球は満杯になり身動きが出来ぬ状態に至っていることがだれの目にも明らかになってきます。


 近代西欧型文明の基本思考である、「進歩と成長」をこれからも引き続き受け入れるには、地球の大きさとその資源賦存量は枯渇の先がすぐに見える貧しいレベルになってしまっています。人類が近代文明上の原型的な進歩拡大を求めることが出来ないとすれば、次はどうすればよいでしょうか。得られそうな解は二つの組み合わせになると思います。第一は「文明の基本的な形態と基本思考を変える」ことです。近代後の新しい文明の創出です。第2は、それでも地球が収容できる人類数が多すぎるのであれば「人口の削減を恐れずに、人口減少世界の積極的招来と受容のステムを創生すること」です。それらの発現が、生物種としてのホモサピエンスの滅亡を意味するかどうか解りません。そうでないように、考え努力していくのが本当の意味での『持続可能な文明』の創成であろうと思います。


 2016年(平成28年)は中近東・アフリカに西欧諸国が近代膨張の過程で残した傷跡の困難な修復の一環としての21世紀の「民族大移動」が続き、自立の難しい中近東・アフリカ地域の前近代からの脱却が地球社会の重い課題としてのしかかってくるでしょう。発展途上国が発展国となって近代化し、先進地域が1世紀前に踏んだと同じ道を後発の利得として駆け足になぞろうとすれば、地球の大きさはそれに耐えられず、温暖化はおろか大食糧危機、エネルギー枯渇で人類総数の大きな削減まで求めてくることになりかねません。人類存続の危機です。



 問題があまりにも多く、近代文明末期の状況が、ローマ帝国の崩壊のころと同じように広域に発現し、どこから誰がいつ何を始めたらよいか判りません。考えられることは、地球人類それぞれが、自らの置かれている状況下で、最善を尽くして自立する方策を考え実行することでしょう。北海道は、地球上ではまだまだ恵まれた土地です。最小のエネルギー消費で自然の大きさに沿って、新しい時代に対応しうる分散自立型社会を創りだす、先例となる島になりたいものです。それがひいては、世界のためになる第一歩です。現代のグローバル社会は近代西欧型システムの行きつく先で、そのまた先を考えていくことが先進地域としての日本と北海道の志でありたいと思います。近代を作ったヨーロッパ大陸の辺境英国とりわけスコットランドのように、アジア中華文明の辺境日本とりわけ北海道が、閉塞する近代の次の時代『後近代』の「物質エネルギー循環が地域に閉じて」「情報と知識交流が世界に広がる」人類の文明が克って経験したことのない、『地域に閉じた物質・エネルギー代謝(Close)』と『世界に開いた情報系(Open)』を持つ、新文明に向かいたいものです。今年一年の初夢では間に合わない長丁場の目標です。


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プロフィール
HN:
丹保憲仁
年齢:
91
性別:
男性
誕生日:
1933/03/10
趣味:
カメラ
自己紹介:
・主な経歴
 水の安全保障戦略機構議長
 日本水フォーラム副会長
 北海道大学名誉教授(第15代総長)
 放送大学名誉教授(第5代学長)
 第89代土木学会会長
 第2代国際水協会会長
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