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一般財団法人北海道河川財団会長 北海道大学名誉教授(15代総長・放送大学名誉教授(5代学長))
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 平成22年4月に22の道立試験研究機関を統合し、地方独立行政法人として発足して3年が経ちました。独法の仕組みとして一期5年を区切りとして、組織が運用されます。第一期の3年が終わったことによって、「道総研」の姿を自らの努力でどのような形と中身に作りつつあるかが言い訳無しに評価されることになります。第4年目は第1期の実質の仕上げの年となるでしょう。第一期最終年の第5年は、仕上げというよりは第2期目への準備作動の開始年として、さらなる10年を見越しての組織を挙げての新たな努力を求められる年になるでしょう。様々な希望と努力については、年度の改まった4月にまた理事長所感として道民・道役職員・機構役職員の皆様に聴いて頂きたいと思っています。

 今日は、第1期3年の道総研創成期を共に努力した、69人の仲間が定年・退職で組織を去ります。58人の人が道庁に戻ります。長い人は道総研設立準備室から5年にわたり道総研創立のために働いて戴きました。昨年までにすでに去った人たちと共に創成期をになった1期生です。道立の試験研究機関に働いていた1,000人を超える研究員・技術者・船員の方々が、創立の準備から始まり今日まで、3年の日々を、縦割りの専門性を超えて,北海道の未来のために「少しでも広く」「少しでも深く」と力を合わせて、総合研究機構の新基軸の構築に日々の努力をしてくれました。これから長い歴史を刻む北海道の科学技術研究機構の、創成メンバーとしての日々の努力はこれからも消えることがなく受け繋がれて、新展開を重ねていくでしょう。
 
 理事長として、創成期の3年を共に働き続けた機構の皆さんに敬意を込めて感謝の意を捧げたいとおもいます。有り難うございました。これからも,「急がず」「休まず」 ( ”Haste Not, Rest Not“)を道総研のモットーとして歩み続けたいものと思います。

 第1期の立ち上がりの3年間に、道総研未来を担う新任研究員43名が創成期の戦力に加わりました。任期付研究員、新船員の加入をも加えて新しい血が組織を若返らせてくれ、50年先の未来を窺がうことも夢でなくなるでしょう。しがらみのない若い血に期待したいと思います。道総研の本当の一期生になってください。

 第1期の立ち上がり3年間、設置者の道知事・副知事・部局の皆様から、諸事多端な中を押して、暖かいご支援とご鞭撻をいただいてきました。また道民の皆様・現場の産業界の皆様・市町村の皆様から様々なご支援とご意見をいただいて、努力を続けることができました。また道議会の様々な会派の方からご支援を頂き、研究機構にまでお運びいただいて活動を見ていただき有難う御座いました。諸大学・国の諸機関・諸金融機関と連携活動を進めさせていただきご支援をいただきました。札幌市はじめ道内諸都市や様々な報道機関との連携をさらに進めることができれば幸いと思っています。

 単なる付加価値の獲得でなく、道内最大の『技術研究集団』として、税金で働く公設研究機構として、『文明の基本価値の獲得と洗練』に力を傾注して、多様な社会・産業活動の土台を固めたいと思っています。

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 去る平成24年7月29日(日)に札幌パークホテルで開催された「第51回十四大都市医師会連絡協議会」において、『近代の終わる頃』と題した特別講演を行いました。
 この度、主催者の札幌市医師会が発行された本協議会報告書に講演内容が掲載されましたので、主催者のご厚意によりこのブログにて紹介させていただきます。

近代の終わる頃~前半~(pdf)

近代の終わる頃~後半~(pdf)
 「北海道立総合研究機構」は、北海道立の22の研究機関を一つにまとめて平成22年に誕生した、北海道の総合的な研究機関です。地方独立行政法人という公的研究機関として活動しています。通称を『道総研』とつづめて表記しています。
 北海道経済の高度化や活性化を図り、道民の暮らしの安全と安定性の確保と利便性の向上を図り、夢と力のある北方圏文明の確立に寄与したいと、歴史ある研究所群を統合して平成22年4月1日に発足しました。農業・水産・林業・工業・食品加工・建築・環境・地質といった各領域の研究所に約1200人の職員がおり、800人の研究職員、研究支援職員(3隻の調査船船員を含む)と事務職員ほぼ200人ずつが、日々働いています。
 道総研を構成する幾つかの研究所の起源は明治初年の北海道開拓使の試験場群に始まり、日本がアメリカ経由で西欧近代文明の基盤構造を導入する過程で、札幌農学校(北海道大学)と並んで大きな働きをしました。後に国直轄の内務省北海道庁の研究所群として充実の歴史を刻んできましたが、戦後に都道府県が地方自治体となる際に北海道に直結する大部分が道立研究機関となり、一部国の各省庁に移った機能と分離して、今日に至っています。農業試験場、水産試験場などがその代表です。
 このように明治期から蓄積してきた100年を超える膨大な近代科学技術の観測と研究の歴史的成果の蓄積と、連綿と続く研究の伝統をもつ道総研は、日本全体で見ても傑出した科学技術の研究集団です。北海道という西欧の中規模国家にも匹敵する域圏を持ち、日本国の中でも明確な地域特性を示す、積雪寒冷の涼冷な気候区を持つ広大な地域に、特徴的な伝統を持つ文化文明を育んできた北海道の総力を結集できる、横断的に分野を包括する総合的科学技術研究機関が、日本でも希に見る大きさで動き出したことの意義は大きいと思います。明治の初め黒田清隆が始動した北海道開拓から約一世紀半、戦後の混乱期を経て、道州制が事実上存在可能な北海道で再び、このような総合研究機構が動き出したことの意味を大切に考えたいと思います。
 日本は世界に先駆けて、国民の高齢化と人口減少が始まっています。近代の大成長の結果世界人口は70億人に達し、未だ増える勢いにあります。しかしながら、大成長を続けているアジア諸国でさえも2050年頃までにはすべて高齢化社会に突入し人口減少が始まると予想されています。地球の大きさの限界にぶち当たって、近代成長社会はもうそんなに長くはつづかないようです。その中でも、北海道は他地域を上回る早さで高齢化と人口減少が始まっており、経済の低迷や集落の維持が困難になる地域が早くも出現するなど、近代成長期には無かった様々な困難に出会っています。しかしながら、長い時間軸で見るならば、北海道は土地と水資源に恵まれ、当面のエネルギー供給の困難を抱えているとしても、バランスの良い食、住、自然を持っており、教育・研究に努力を傾注すれば、適度の人口密度を保持してアジアでは高度の文明度・経済力を持続的に発揮できる地域です。
 北海道の再生可能エネルギーの潜在埋蔵量は大きく、石炭ベースのエネルギー基盤を失った現在から、新しい科学技術の開発と新技術の地域展開に努力を傾注して行くならば、再び充分な質と量のエネルギー供給を今世紀の半ばには獲得できるように思います。軽水炉型のU235を燃やす原子炉も石油/天然ガスによる熱/電気エネルギーの大量供給も化石エネルギー/ウランU235資源の枯渇で100年は持ちません。そこに至る間に経時的にその段階に応じたエネルギー・ベストミックスの階段を着実に登り、エネルギー生産/分配の効率化と、利用の際のエネルギー種選択と省エネルギー技術の革新的な構築を広領域で成し遂げ、再生可能エネルギー主体に生きていかねばならないであろう22世紀の共生社会に到達したいものです。エネルギー転換という文明の基盤に関わる問題を、人類の生存に関わる最も基本的な広領域の課題と捉えて、文明の基本を再構築するための努力と忍耐を続けられるかが問われていると思います。近代社会の易々とした生き方を多少顧みる程度や、単に脱原発を願うくらいのことで、再生可能エネルギー主体で生きていかねばならない近代の次の時代の共生の文明(後近代社会、Post Modern Civilization)に行き着けるとは思えません。
 日々の生活の形をしっかりと見直して、住環境、資源利用、教育、食文化、健康福祉、家族・社会構造、経済構造、安全保障などなどを広領域に考えて、半世紀以上の継続的な新文明への努力が、新科学技術展開の全過程を通じて、無駄のない生産技術や消費システムの構築/運用に配慮しながら続けられる必要があります。現代のあくなき欲望を顧みることなく易きに安住するポピュリズムでは、この構造的な危機を乗り切ることは不可能であり、国民の将来を危うくする元と思わざるを得ない心境です。無駄を省く事を常に施策の中心におきながら、新しい課題に立ち向かい、次代の仕組みを着実につくり上げていくのでなければ、新文明への展開の途中で社会は崩壊するでしょう。
 全アジアにわたって食料・水や、エネルギー供給不足が大きな問題になってくると思いますが、その時に北海道の恵まれた自然と適度な人口密度の下で、しっかりとした教育・研究と福祉の体制を整えておけば、北海道は量的成長をひたすら求めた近代の次に来る成熟社会(後近代社会:共生社会)の高価値地域に、極端な困難無しに展開できるでしょう。
 こうした未来を求めて、長期的な視点のもとに英知を結集して『北海道の未来』を描き、産業技術と生活文化を未来志向的に構築する絶えざる努力を続けることが、道総研を始め北海道の大学/研究機関/指導的団体に必要になります。道総研は各分野の専門を融合的に運用して、持続的な努力を長い時間軸で考えることが出来る公設研究機関の特徴を大切に使っていきたいと思います。地に着いた地域の課題に目を配り、問題の本質を摘出し、日々の研究成果を地域に還元して道民の日常の求めに応え、未来への展開の足がかりを築き、新たな知見と技術の創出を図りながら、自らの学問の水準と活力を高め続けていきたいと思います。北海道の行政や市町村の必要と活動に連動し、大学・国の研究機関、様々な企業・業界・NPO、金融機関とも連係を密にし、様々な事柄を学ばせて頂き、北海道民の負託に応える努力を怠らぬようにしたいと思います。道総研は北海道の公的研究機関ですがその大きさと活動している分野の広さからして、北海道民の為の狭義な活動に自らを閉じ込めてはいけないと思います。『道総研』は、北海道が誇る日本有数の総合研究機構であることを忘れず、北方文明圏からの科学技術の発信源であり、日本の北に位置する創成的研究の巨人でありたいと思います。
 道民をはじめとする日本国民、世界の人々のご支援と御鞭撻をお願いして、混沌とした近代末期の世界において科学技術を実学的に展開するパイオニアーになる努力を今年も続けたいと思います。
著作を2つご紹介します。



都市・地域 水代謝システムの歴史と技術
 



(本書「はじめに」から)

 世界や日本の社会システム、そして水の文明の将来はどのように展開していくのでしょうか。筆者が1950年代半ば水システムの技術とその地域社会への展開を学ぶ道に入ってから60年の月日が経ちました。この間、水についてさまざまな勉強を重ね、一生懸命に考えてきましたが、個人が先を見ることの高は知れていますし、しっかりとした知見を求め歩くには世界は広すぎますし、世の中の移り変わりは、求める構造を頭の中でしっかりと組み上げていくより早
くかつ複雑に動き、なかなか明確に事柄を示せないでいます。
 1970年代から考え続けて、「都市/地域水システム(水代謝)の閉鎖化」「多元化/多段化」「分散自立化」という概念が、近未来の人間社会を「隣人と共存」し、「他の生物と共生」して安定に作っていくために重要であろうと思ってきたことが、恐らく間違っていなかったと、現代世界の日々の展開の中で確信しつつあります。
 半世紀以上も働いているうちに、「Sustainable」という言葉が近年になって世の中に広く流布し、かねて考えてきたことを言っているのだと納得する一方、「環境の時代」といってもそれはいまだ近代そのものの上にあり、「成長を主目標」とし「学習可能な手順論」に寄りかかった「科学技術の巨大化/精密化」を駆動力とする近代を人類が抜け出すのは容易でないことだと改めて思う毎日です。近代の次の時代を「後近代」と筆者は長年称してきましたが、「PostModern」という言葉は芸術/文学などの分野ではすでに多く使われており、手垢の付いた言葉かもしれません。しかし具体に、近代の次の社会基盤システムを描いた実体的な物を見ることはあまり無いようです。
 そこで、今まで考え続けてきて、多分それ無しには次の時代(22世紀)に人類社会は渡れないであろうと考えている水システム構成を、筆者が半世紀余り体験し、学んだことを歴史の流れ/経過の一部と考えて、筋道立てて明らかにしてみたいと思います。個人の学習ですから、平衡を欠く理解/見方もあるかもしれません。参考資料として記したものは手元にあって勉強した資料で、そのほとんどは一緒に勉強をし仕事をした仲間や先輩からのものです。できるだけ論文や研究報告書のような専門家用のものは避けました。読者の学ばれた背景によっては、すぐには読み切れない箇所があると思いますが、そこは飛ばしていただいて全体を見た上で、また戻って読んでいただけたら幸いと思います。具体の中身が分からぬまま、世間の流れでものを考えたり言ったりすることがありすぎる今日このごろのように思います。面倒でも事柄をさまざまに見据えた上で、行く先を考えることができたら良いと思い、筆者が見聞きしてきたことを読者の参考としてまとめてみました。筆者の視点で書き進めていますが、同じ事柄を見て違う考えが生まれれば、世界をより広く柔らかく進めることができようかと思います。
 この春で、筆者は傘寿を迎えました。考え続けても、自らデータを作り、多量の資料を処理するのは理系のしかも工学という物作りの専門家としては、ある種の限界を感じる環境になっています。第7 章については、若い研究者/技術者の方が、これから先次々と、より説得力のある提案を具体のデータに基づいて展開していただけると幸いです。
 50年間の研究を支え続けてくれた、妻「綾子」にこの書を、感謝を込めて贈ります。
                                               (2012年初夏 丹保憲仁)
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○都市・地域 水代謝システムの歴史と技術(丹保憲仁著)
  頁数:478
  ISBN:978-4-306-08533-6
  発行日:2012年7月30日
  発行所:鹿島出版会





 



水の危機をどう救うか-環境工学が変える未来-
 


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○水の危機をどう救うか-環境工学が変える未来-
 【PHPサイエンス・ワールド新書(丹保憲仁著)】
  頁数:317
  ISBN 978-4-569-80925-0
  発行日:2012年12月4日
  発行所:PHP研究所

 書籍紹介~月刊「水」より~(pdf)









 

 
土木学会誌の2012年6月号にインタビュー記事が掲載されました。
土木学会のご厚意によりこのブログにてご紹介します。

土木学会誌2012年6月号.PDF
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プロフィール
HN:
丹保憲仁
年齢:
91
性別:
男性
誕生日:
1933/03/10
趣味:
カメラ
自己紹介:
・主な経歴
 水の安全保障戦略機構議長
 日本水フォーラム副会長
 北海道大学名誉教授(第15代総長)
 放送大学名誉教授(第5代学長)
 第89代土木学会会長
 第2代国際水協会会長
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